仕入旅よもやま話
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その1  ビルクルパッカーへー!

海外へ仕入に行っている時は分刻みとは言いませんが、数時間単位で予定を立てて動いていかなければ思ったところがまわれず、欲しい物を確保したりオーダーすることが出来ない時もあります。

そんな時に問題となるのが、現地の商売人と日本人との時間に対する考え方の違いです。
待ち合わせをしても1時間くらいは遅れのうちに入らない感覚の人や、約束した納品日が1日や2日遅れても、こちらが本気でキャンセルを迫るまでは全然平気な人もいます。
私の日程を理解してくれている友人ならかなり約束を守ってくれますが、あくまで「かなり」です。私も一応理解はしているつもりなんですが、時間が無い時にはたまりません。

これはインドのある町で、旧知の仕入れ先との打ち合わせ中でのことです。
「おいタケ(私の愛称)、こんどのカリスマー・カプールの映画、面白いらしいぞ。6時からの上映に間に合うから、今から行かないか?」
「おいおい。」
「残りの仕事は明日の朝からにしよう!なーに、明日で充分間に合う。」
「仕事が先だ。こっちは時間がないんだよ。」
「でもカリスマーのファンだろう?あの首の振り方がいいんだよなあ。」
「うん。あの、いや、今回はせっかくだが映画は止めておく。仕事をさせてくれよ。」
好意で言ってくれていると思って相手をするのですが、こっちは明日、別のところでオーダーした布の検品も予定していますのでたまりません。
こんな話の脱線が続いて、いつのまにか相手に交渉の主導権を握られてしまいそうになることもあり、これも高度なビジネステクニックかなと考えてしまいます。

「じゃあ仕事を片付けるか。そうだ、女房の手料理をごちそうするから明日の昼食は一緒に食べよう。明日それくらいの時間はあるだろう? ところでタケ、その大理石の小箱、もっと買わないか?日本で絶対売れるぞ。買え!俺は映画に行きたいのを我慢するんだから、もっと買え!」

せっかくだからと予定をやりくりして次の日に昼食をごちそうになった後、
「今から映画に行かないか?いや、やっぱり映画館は混むからダメだ。な、これからビデオ見ないか?このテレビ、でっかいだろう?迫力満点だぜ。あ、大理石の小箱は本当に追加しないのか?今ならまだ間に合うぞ!」
「それよりも残りの商品は明日間違いなく入荷するのか?」
「パッカーパッカー!ビルクルパッカーヘー!(完璧、完璧!超完璧!)」
今までこの言葉を信じて何度泣かされたことか・・・

やっぱり残りの商品は約束の日に少ししか入荷せず、その2日後ネパールへ出発する朝に大急ぎで検品をして、彼にカーゴ屋への持込みを頼みました。

フライトの時間がせまって泣きそうな私の顔を見て、
「後のことは任せておけ。俺がちゃんとカーゴ屋へ持っていくから何も心配するな!」
「本当に大丈夫か?」
「パッカーパッカー!ビルクルパッカーヘー!!」

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